物価高騰時の購買行動 後編
「物価高とSDGsに関する調査」結果を元に解説
この記事では、物価が上昇する中での消費者の買い物の傾向について詳しく解説します。
食品や飲料の価格が上がり、家計が厳しくなる中で、消費者はどのように工夫して対応しているのか、どの食品や飲料カテゴリーに対する意識が変わっているのか、そして企業の値上げに対する感想はどうなのか、などについて調査結果をもとに説明します。本テーマは、前編、中編、後編の3部構成でお届けします。
今回は<後編>です。
中編では、生活者は各食品・飲料のカテゴリに対し、どのような意識を持っているかを見てきました。そこでは、馴染みのブランドが選択されやすいもの、スイッチが起こりやすいもの、価格に特に敏感なもの、買い控えの対象になりやすいものなど、カテゴリごとの特徴が分かりました。
本篇では、食品・飲料価格維持と値上げについて、生活者がどのように考えているのかを紹介します。
<Contents>
・許容できる値上げと、できない値上げとは?
・家計状況区分別にみた、価格維持と内容のトレードオフに対する意識とは?
・今回のまとめと次回の予告
許容できる値上げと、できない値上げとは?
まず、価格高騰に際し、消費者としてメーカーや小売店にしてほしくないことについて聴取した結果を見てみましょう。<図1>
全体では、企業・メーカーにしてほしくないこととして「価格維持のため、多少の品質グレードをダウンする」が34.2%と最も多く次いで「価格維持のため、商品の内容量を縮小・減らす」が28.0%となっています。これは、消費者が値上がりするより、品質や内容量が低下することを忌避する傾向があることを示しています。
一方、「原価上昇分だけを、価格に転嫁するが、商品内容はそのまま」は8.0%、「原価上昇分以上に価格転嫁され、商品内容はそのまま」は19.2%、「原価上昇分以上に価格は上がるが、その分付加価値も追加される」は8.9%となっています。これは、消費者が価格上昇を受け入れる条件として、商品の内容や品質が維持されること、あるいは付加価値が追加されることを求めていることを示しています。
図1 消費者としてメーカーや小売店にしてほしくないこと(n=2189)
家計状況区分別にみた、価格維持と内容のトレードオフに対する意識とは?
次に、家計状況の区分別にクロス集計した結果を見てみましょう。<図2>
図2 消費者としてメーカーや小売店にしてほしくないこと:家計状況区分別
まず、家計に「ゆとりあり」との層は、「価格維持のため、原材料の品目を変更する」や、「価格維持のため、原材料の産地を変更する」等についても、やってほしくないと考えている人が多いことが伺えます。
一方、家計が「苦しい」との回答者は、「多少の品質グレードをダウンする」のスコアが23.5%と、他の家計状況区分の回答者に比べ10-15ポイント低いことが分かります。つまり、家計に余裕がない層は、品質のグレードダウンより、価格維持を期待する傾向が見られます。
これは、生活に余裕がある人は品質、原材料の品目、産地の安定を優先し、生活が苦しい人は価格の安定を優先する傾向があることを示しています。
今回のまとめと次回の予告
これらの結果から、生活に余裕がある人と生活が苦しい人とで、価格と品質に対する価値観が異なることを理解し、それぞれのニーズに合わせた商品開発や価格設定を行うことが重要と言えそうです。
また、家計にゆとりがある層は、品質やグレードの維持、付加価値を重視する傾向があるため、これらを考慮した商品企画が求められます。この層は同時に価格転嫁に寛容であるため、価格上昇を伴う場合でも、その理由と商品の価値を明確に伝えることが重要です。
3回シリーズで見てきましたが、物価上昇は、確実に家計に大きな影響を与えています。しかし、ブランドスイッチのチャンスと捉えることができることも分かりました。そのためには、ターゲットの価値観や、食品・飲料カテゴリの特徴を理解し、それに対応した商品開発や価格設定を行うことで、消費者からの支持を得ることができるでしょう。
これで、本テーマは終了です。
次回のコラムでは、新テーマ「企業がSDGs推進するには~有職者アンケートより~」を、前・中・後編の3回シリーズでお届けします。お楽しみに。
次回:企業がSDGs推進するには~有職者アンケートより~<前編>(2023年11月21日公開予定)
関連ページ
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> SDGsプロデューサー 沢村愛弓オフィシャルサイト(https://sawamura-ayumi-sdgs.com/)
> 無料自主調査レポート「物価高とSDGsに関する調査」(近日公開予定)