企業がSDGsを推進するには 中編
「勤務先のSDGs取り組みに関する意識調査」結果を元に解説
国連が提唱するSDGsは、2030年までに解決すべき社会課題の目標となっています。これは政府や企業だけでなく、私たち一人一人の生活にも関わる大切な課題です。そこで、企業がSDGsを推進し、達成するためには、社員一人一人の協力が不可欠です。
このコラムでは、さまざまな規模の企業で働くビジネスパーソンたちを対象に、彼らがどのようにSDGsについて認識し、自分の会社の取り組みをどう評価しているのかをまとめました。本テーマは、前・中・後編の3回シリーズでお届けします。
今回は<中編>です。
前編では、勤め先での実施・浸透状況と、SDGsで取り組まれている内容について見てきました。
本篇では、ビジネスパーソンが、SDGsが企業活動に対する意識について、説明していきます。
<Contents>
・SDGsが企業活動に与える効果とは
・社会課題の解決と企業成長に対する意識
・今回のまとめと次回の予告
SDGsが企業活動に与える効果とは
まず、有職者が自分の勤め先とSDGsの取り組みについて、どのように考えているのか見てみましょう。
「ブランドイメージ向上につながる 」、「得意先との関係維持・強化に必要」、「新しい事業機会や市場機会につながる」、「人材の採用や社員の定着につながる」の4つの場合について、SDGsの17の目標が、自分たちの勤め先にどのような効果を持ったらすと思うか、聴取しました。<図1>
図1 SDGsが企業活動に与えると思う効果(n=788)
結果を見ると、「ブランドイメージの向上」については、17の目標全体に対する反応が高いことが特徴的です。それ以外の「顧客との関係の維持」「新しいビジネスや市場の機会」「人材の採用や社員の定着」については、程度の差はありますが、全体的に反応が低いことが見て取れます。
つまり、現時点で意識されるSDGsの効果は「ブランドイメージの向上」にとどまっていると言えます。「事業機会」「得意先との関係強化」などは相対的に低く、社会課題の解決と企業成長の両立をイメージできる人が少ないことが、示唆されます。
社会課題の解決と企業成長に対する意識
次に、SDGsを企業が推進することについての意見を自由回答形式で聴取した結果を見てみましょう。<表1>
表1 勤め先はSDGsをどのように取り組むべき/活用するべきか(自由回答結果要約)
まず、ポジティブな意見をまとめると、「ブランドイメージの向上」「社員の意欲向上」「仕事の増加」が挙げられます。これらから、SDGsが企業の成長や働きがいに貢献するというイメージとリンクしていることが分かります。
一方で、慎重な意見や疑問を持つ意見も少なくありません。「SDGsウォッシング(偽善)」や「推進に伴うコストの増加」、「給与や収益の向上」を疑問視する意見も見られました。つまり、社員がSDGsについて十分に理解していない、社会の問題解決と企業の成長が連携していると思えない、SDGsの推進が高コストだと感じるなど、これらは企業がSDGsを進める上で、解決すべき課題ということができるでしょう。
今回のまとめと次回の予告
これらの調査結果から、現在の社員がSDGsの効果を「ブランドイメージの向上」だけと認識していることがわかりました。「事業機会」や「得意先との関係強化」などの効果はまだ十分に理解されておらず、社会問題の解決と企業の成長を同時に達成するイメージが持てていない人が多いことが明らかになりました。
さらに、自由回答の結果からは、「SDGsへの理解不足」、「社会問題の解決と企業成長の両立がイメージできない」、「SDGs推進がコストがかかるという誤解」など、企業がSDGsを進める上で解決すべき課題が見つかりました。 では、どうすれば社員を巻き込んでSDGsを推進できるでしょうか。次回の後編では、「自分の会社のSDGsの取り組みを理解している」社員に焦点を当てて、その方法を探っていきたいと思います。
次回:企業がSDGs推進するには~有職者アンケートより~<後編>(2023年12月19日公開予定)
関連ページ
> 企業がSDGs推進するには 前編
> 企業がSDGs推進するには 後編(2024年01月16日公開予定)
> SDGsプロデューサー 沢村愛弓オフィシャルサイト(https://sawamura-ayumi-sdgs.com/)
> 無料自主調査レポート「物価高とSDGsに関する調査」(近日公開予定)