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やさしく紐解く マーケティングリサーチ 第2回:マーケティングリサーチはAIでどう変わる?

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やさしく紐解く マーケティングリサーチ

第2回:マーケティングリサーチはAIでどう変わる?

いま注目される「合成データ」の現在地

前回は、「MSSってどんな会社?」をテーマに、私たちの事業やマーケティングリサーチへの向き合い方をご紹介しました。
今回は、少し視点を未来に向けて、急速に普及するAIがマーケティングリサーチにどのような変化をもたらしているのかを取り上げます。

アンケートの作成や自由回答の整理、データ分析など、AIが活用される場面は少しずつ広がっています。
その中でも、近年注目されているのが「合成データ」です。

合成データにはさまざまな期待が寄せられる一方で、業界では慎重な見方もあり、今まさに活用のあり方が議論されています。
本記事では、合成データに寄せられる期待と、活用にあたって慎重に考えるべき点、そしてMSSで行った検証の内容をご紹介します。

執筆者紹介
水野リサ(リサーチャー)


定量・定性調査の両方に携わり、データと人の声の両面から物事を考えることを大切にしています。
「難しいことをわかりやすく」をモットーに、リサーチやマーケティングに関する知見を発信しています。
読者の皆さんに役立つ情報をお届けできればうれしいです。
※水野リサはコラムのための架空の登場人物です。

AIは、調査の「前後」も支える存在に

生成AIというと、文章や画像をつくるものという印象が強いかもしれません。
けれど、マーケティングリサーチの現場でも、その活用範囲は少しずつ広がっています。

たとえば、調査を始める前に仮説を整理したり、インタビューで聞くべき論点を洗い出したりすること。
集まった自由回答を似た意見ごとに分類したり、分析結果を読み解くための視点を広げたりすること。
AIは、調査そのものを置き換えるというより、リサーチャーが考え、整理する作業を支える存在として活用され始めています。

こうした流れの中で、海外を中心に議論が広がっているのが「合成データ(Synthetic Data)」です。
合成データとは、現実のデータの特徴やパターンをもとに、AIやアルゴリズムによって人工的に生成されたデータを指します。
実在する個人の回答をそのまま使うのではなく、元となるデータの傾向を再現するようにつくられる点が特徴です。
こうした特徴を生かし、さまざまな場面での活用が検討されています。

合成データをめぐる、期待と慎重な見方

合成データについては、現在も業界内でさまざまな意見が交わされています。
大切なのは、単純に「使う・使わない」で考えるのではなく、どのような場面や条件で活用できるのかを丁寧に見ていくことです。

合成データを活用することで、プライバシーや機密情報に配慮しながらデータを扱いやすくなったり、仮説づくりや企画段階の検討に役立てられたりする可能性があります。
また、活用方法によっては、調査や分析にかかる時間や負担を抑え、リサーチャーが結果の解釈や考察により多くの時間を使えるようになることも期待されています。

一方で、AIが学習したデータにもともと偏りがあれば、その偏りを引き継いでしまう可能性があります。
また、どのようなデータや仕組みから生成されたのかが分かりにくい場合、結果の妥当性を説明しづらくなります。
実際の生活者が持つ多様な意見や回答傾向をどこまで再現できるのか、生成したデータをどのような基準で評価するのかについても、慎重に見極める必要があります。

マーケティングリサーチ業界でも、調査データの品質や透明性を重視し、合成データについては、もととなるデータや生成方法を明らかにしたうえで、十分に検証して活用することが求められています。
新しい技術だからこそ、便利さだけに注目するのではなく、結果をどこまで信頼できるのかを確かめ、人が適切に確認・判断できる体制を整えることが重要です。

MSSで検証して見えてきたこと

こうした期待や課題を踏まえ、MSSでも、合成データの活用可能性を探る取り組みの一つとして「拡張合成データ」の実用性を検証しました。

ここでいう拡張合成データとは、実際のデータをもとに不足しているサンプルをAIで生成し、不足分を補うものです。
今回の検証では、回答を集めにくい割付セルを、従来のウェイトバックとは異なる方法で補える可能性があるかを確かめました。

検証では、Webアンケートの回答データや設問構造、回答コード、回収済みのサンプル数と目標サンプル数をAIに参照させ、不足分のデータを生成しました。
また、実際のデータと生成したデータを区別できるフラグを付け、同じ条件で複数回生成した場合にも、結果が安定しているかを確認しました。

評価にあたっては、単純集計やクロス集計だけでなく、設問間の回答パターンが保たれているか、回答の多様性が失われていないか、不自然なデータが含まれていないかといった点も確認しました。
さらに、実際のデータの一部を意図的に欠損させたデータに拡張合成データを追加し、欠損したままの状態よりも、実際のデータに近づくかを確かめるホールドアウト検証も行いました。

その結果、欠損データに拡張合成データを加えても、全体の集計傾向や回答構造は大きく崩れないことが確認できました。
一方で、「不足していた回答を補うことで、本来得られていた調査結果により近づけるのか」という観点では、現時点では十分な効果を確認できませんでした。

今回の検証から見えてきたのは、拡張合成データには活用の可能性がある一方、本番調査の回答を補完できる段階にはまだ至っていないということです。

ただし、今回の取り組みから得られたものは、実用化の可否だけではありません。
品質をどう評価するか、どのような検証であれば妥当性を説明しやすいかなど、今後につながる知見を得ることができました。
また、合成データを生成する技術の検証や、実際の回答データを使わないシステムテスト、合成データを追加した際の集計・分析結果への影響確認など、調査回答の補完とは異なる用途で活用できる可能性もあります。

この検証は、単に活用の可否を判断するだけでなく、新しい技術の可能性と課題を整理する機会にもなりました。
MSSでは、より良いマーケティングリサーチのあり方を追求するため、今後もこうした新しい技術と丁寧に向き合っていきます

AIとリサーチが、それぞれの得意を生かす未来へ

AIや合成データの技術は、これからも進化していくと考えられます。
生成方法や評価手法がさらに磨かれれば、調査前の仮説づくり、複数のシナリオの比較、調査設計の検討など、これまで時間をかけていた作業をより柔軟に行えるようになるかもしれません。

一方で、生活者本人の声を聞くことには、数字だけでは捉えにくい価値があります。
一人ひとりの価値観や回答の背景、多様な声。
こうしたものは、実際の生活者と向き合う調査だからこそ見えてくるものです。

これからは、「AIか、人による調査か」という二者択一ではなく、それぞれの得意なことを組み合わせる時代になっていくのではないでしょうか。
AIを使って仮説を広げ、その中から確かめるべきテーマを絞り込み、実際の調査で生活者の声を聞く。
そんな使い方も、今後はより身近になるかもしれません。

MSSでは、新しい技術の可能性を丁寧に見極めながら、生活者理解やマーケティング課題の解決につながる活用を目指していきます。


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