MSS Trend Topics
- Home
- MSS Trend Topics一覧
- 消費者理解を加速するAIデジタルツイン・AIペルソナ:生成AI時代のマーケティングリサーチ MSS Trend Topics 第5弾
消費者理解を加速するAIデジタルツイン・AIペルソナ:生成AI時代のマーケティングリサーチ MSS Trend Topics 第5弾
- リサーチ
- トレンドトピック

MSS Trend Topics 第5弾
消費者理解を加速するAIデジタルツイン・AIペルソナ:生成AI時代のマーケティングリサーチ
新年あけましておめでとうございます。
株式会社MSSは本年も、調査研究という仕事に真摯に向き合い、生活者理解を通じてお客様の意思決定に寄り添うことを大切にしてまいります。変化のスピードが速い時代だからこそ、確かな根拠に基づき、丁寧に考える姿勢を忘れず、実直な調査研究を積み重ねていきたいと考えています。また、2026年のMSSは、少し先の未来を見据えながら、より一層「気づきがある」「示唆がある」と感じていただけるような調査研究に挑戦していきます。
2026年最初のMSS Trend Topicsは、生成AIをマーケティングリサーチの現場でどのように活かすべきかについて、調査の代替ではなく、意思決定を支えるための手段としての可能性をMSSの視点から整理します。
【本稿のナビゲーター】

MSSのAIキャラクター「渡辺直樹(わたなべ なおき)」です。
私は、MSSの中で活躍するデータアナリストやリサーチャーたち(いわゆる“中の人”)が執筆した最新コラム記事を、皆さまにお届けするナビゲーター役を務めています。
新しい2026年にあたり、フレッシュに皆様に興味を持っていただけるようなコラムを目指してまいります。

生成AIの利活用が当たり前になってきた昨今、マーケティングリサーチの現場でも「調査はもっと速くできる」「過去データを資産化できる」という期待が高まっています。
ここで大切なのは、生成AIは“調査を置き換える魔法”というより、意思決定までの距離を縮める加速装置だという点です。MSSでは、生成AIの使いどころを誤ると、速さと引き換えに信頼性を落とす恐れがあると考えています。しかし、しっかりと設計して使えば、マーケティングリサーチの価値(=判断の質とスピード)を確実に押し上げることができるのです。
生成AIとは何か(マーケティングリサーチ目線での定義)
生成AI(Generative AI)は、文章・画像などを“生成”するAIです。マーケティング領域でインパクトが大きかったイノベーションは、広告クリエイティブの自動生成です。コピー案、バナー案、キービジュアル案、動画の絵コンテ案、パーソナライズ表現まで、これまで制作に時間がかかっていた工程を一気に短縮できるようになってきたようです。
生成AIの真価は、「作れる」こと自体より、大量に作って、素早く検証、学習して次を当てにいく――この回転が現実に回ることです。
生成AIのリサーチ領域での利活用
マーケティングリサーチ領域におけるAIの利活用の方向性はふたつあります。ひとつは、生成AIを使って調査の各工程(企画→設計→収集→分析→示唆化)を高度化する考え方です。もうひとつは、「AIデジタルツイン」と「AIペルソナ」を軸に、調査を“学習する仕組み”へ進化させる取り組みも始まっています。
AIデジタルツインとは、「現実の人や集団、空間を、データ上で再現した“分身(ツイン)”」のこと。行動履歴や購買データを学習させたAIに特定の実在する個人をデジタル上に生成させることで、その人の広告に対する反応や調査結果などをあらかじめ予測することができます。現実の人をその都度リクルートしなくても、意思決定に必要な論点を素早く洗い出し、仮説を作り、検証設計を整えるためのシミュレーターとして機能するわけです。
AIペルソナは、消費者の大量データから作り出した、特定の特徴(30代、女性、共働き世帯など)を持つ架空の典型的な消費者像のこと。コンセプトや広告表現、価格、チャネル施策などをぶつけて、どんな反応が返ってくるかを試すことができます。
目的はマーケティングリサーチ実査の代替ではなく、仮説づくりと検証設計を前倒しで磨き、必要な実査を最短・最適にすること。AIデジタルツイン/AIペルソナで“当たりそうな論点”を先に見つけ、重要テーマだけを実在の生活者調査で検証することで、調査コストを抑えるだけでなく、意思決定のスピードを高め、仮説検証の道筋を明確にしたうえで納得感のある意思決定を後押しします。
MSSの取り組み:独自調査データを学習した「ペルソナ生成AI」を試運転
当社は生成AIリサーチ利活用の実装として、独自に蓄積してきた一般生活者・消費者調査のデータ(数万件)を読み込ませた生成AIにより、特定属性(年代・家族構成・ライフスタイル等)のペルソナモデルを生成し、回答傾向にもとづく“擬似回答(既存のデータ以外の回答)”を出力する取り組みを試運転しています。
狙いは「リサーチの置き換え」ではなく、リサーチ前後の仮説構築工程を速く・高精度・効果的にすることです。
- 各種施策・戦略案企画段階の仮説づくりや評価
- マーケティング課題の生活者目線でのブレスト
- コンセプト案の事前・事後スクリーニング
- マーケティングリサーチ設計や設問案準備
ここで重要なのは、AI出力を“事実データ”と混同しないことです。位置づけはあくまで過去データに基づく推定であり、意思決定の重要度が高い領域では目的に応じて実査・実データで検証する、という運用が前提になります。 生成AIを活用したマーケティング事例としてコカ・コーラ社の事例もご紹介します。
マーケティング活用事例:コカ・コーラ社の「Create Real Magic」
生成AI活用の“学びが多い”事例として、コカ・コーラ社の取り組みは示唆的です。
コカ・コーラ社は2023年に、OpenAIとBain & Companyと組み、GPT-4とDALL·Eを組み合わせたプラットフォーム「Create Real Magic」を発表。世界のデジタルクリエイターがコカ・コーラの象徴的なブランド資産(ボトル、ロゴ、サンタ、ポーラベア等)を使って生成AIで作品を制作し、応募作品がタイムズスクエア等のデジタルボードに掲出される仕組みを作りました。
また、2024年のホリデー施策では、QRコード等からアクセスして“AIでサンタと会話し、パーソナライズされたスノードーム(アニメーション)を生成して共有する”体験を45言語以上の地域で提供しました。
この事例の興味深い点は「広告制作がラクになった」だけではありません。
ユーザー参加型の生成体験を設計すると、(1)どんなプロンプトや表現が生まれるか、(2)どの作品が共有されるか、(3)どんな感情語で語られるか、といった“生きた反応”が大量に集まります。これらは、従来のアンケートだけでは拾いにくい態度・連想・文脈のヒントになり得るわけです。つまり、生成AIは「表現を作る道具」であると同時に、反応データを集める装置にもなり得るのです。

失敗しないための最低限のルール
生成AIのリサーチ利活用は、仮説づくりや分析のスピードを上げられる一方で、以下のようなリスクもあります。
- 出てきたアイディアや結論が一般的で平均的すぎるものになりやすい
- もっともらしい推測を事実のように扱ってしまう(=ハルシネーション)
- 過去のデータを参照するため、今の生活者・文脈とズレている可能性がある
こうしたリスクを考慮し、前提条件やデータに間違いはないか、AIが出力した結果に妥当性があるか、文章や言葉がしっかりと文脈に沿った意味になっているかを見極める必要があります。AI任せにせず、例えば以下のような失敗確率が下がる運用を組むことも求められています。
- まずAIに“やらせない”ことを決める
AIが得意なこと(下書き・候補出し・整理・要約)を理解し、任せてはいけないこと(因果の断定/重要数値の確定/投資判断の根拠化)を把握する。 - 出力の型を固定し、自由作文にしない
例:根拠→要約→示唆→次に検証すべきこと ※各項目に戻れる手がかりを必須にする - 毎回反証を“作らせる”
反対解釈を3つ/この結論が外れる条件/追加で確認すべきデータ、等 - 平均化を防ぐために、セグメント設計を雑にしない
シーン(いつ・どこで・何のために)/ 制約(時間・予算・家族・手間)/態度(選好/拒否/不安/期待)の明確化など - 運用を“資産化”する
・「いつ時点の話か」を明記(対象期間・直近の環境変化を入力必須に)
・プロンプトと出力フォーマットをテンプレ化(ログも残す)
・機密・個人情報は入力前にマスキング
AIリサーチを勝ち筋にする鍵は、ツール選びより『運用設計』にあるのではないかといえます。 生成AIは「自動化する道具」ではなく、意思決定の回転数を上げ、過去知見を資産化するための基盤といえるでしょう。コカ・コーラ社のように、生成AIを“表現”だけでなく“反応を集める体験”として設計すると、学習のスピードも上がるわけです。
AIは作業を効率化する加速器。しかし、速さはAI運用のゴールではありません。ゴールに最短でたどり着くための手段です。勝敗を分けるのは、結局のところ意思決定の判断力とそれを裏付ける根拠なのです。
AI時代だからこそ、「そもそもやるべきでないことを、いくら効率的にやっても意味はない」というドラッカーの言葉を忘れてはならないのです。
いかがでしたか?
2026年初回の「MSS Trend Topics」は、マーケティングやマーケティングリサーチ領域における生成AI利活用についてお届けしました。
次回は2月にトレンド発信する予定です。どうぞお楽しみに。

2025年掲載のコラムも是非、ご一読ください。
【2025年のマーケティングトレンドまとめ】
https://mssinc.jp/marketing_column/8651/
【見えないインサイトを可視化する:テクノロジーが拓く新しい顧客理解】
https://mssinc.jp/marketing_column/8587/
【変化に即応するアジャイルマーケティング戦略】
https://mssinc.jp/marketing_column/8526/
【これからの時代のデータドリブンマーケティング】
https://mssinc.jp/marketing_column/8519/
引き続きMSSとMSS発信のコラムや記事を宜しくお願いいたします!
コラムを読んでいただいた皆様のご意見やご感想を是非お寄せください。
MSSについての詳細は ▶こちら
調査のお問い合わせは、▶こちら