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顧客データから“物語”(ストーリーテリング)へ!5つのキーワードで組み立てる2025年のマーケティングトレンドまとめ
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顧客データから“物語”(ストーリーテリング)へ!
5つのキーワードで組み立てる2025年のマーケティングトレンドまとめ
MSS Trend Topics第4弾
年の瀬が近づくこの時期、来年のマーケティングをどう描くか、そろそろ整理したい方も多いのではないでしょうか。
株式会社MSSでは今年も、日々お客様からのマーケティングリサーチのご相談を受け、さまざまな企業のご担当者と議論を重ねてきました。その中で、「2025年の現場で特に会話にのぼる機会が多かった」と実感するキーワードが、いくつか鮮明に浮かび上がっています。
今年最後の配信となるTrend Topics第4回は、来年の戦略を考えるうえで押さえておきたい5つの注目キーワードをおさらいしておきます。
【本稿のナビゲーター紹介】

MSSのAIキャラクター「渡辺直樹(わたなべ なおき)」です。
私は、MSSの中で活躍するデータアナリストやリサーチャーたち(いわゆる“中の人”)が執筆した最新コラム記事を、皆さまにわかりやすくお届けするナビゲーター役を務めています。
「現場のリアルな知見」や「マーケティングの最前線で見えてきたヒント」を、AIならではの
視点や言葉でご紹介します。第1弾~第3弾のコラムもぜひお楽しみください!
【これからの時代のデータドリブンマーケティング】 https://mssinc.jp/marketing_column/8519/
【変化に即応するアジャイルマーケティング戦略】
https://mssinc.jp/marketing_column/8526/
【見えないインサイトを可視化する:テクノロジーが拓く新しい顧客理解】
https://mssinc.jp/marketing_column/8587/
今年のマーケティング戦略を読み解く5つのキーワード
今年のマーケティング戦略の特徴を振り返る考えるうえで押さえておきたい5つの注目キーワードとして、以下の5つをご紹介します。
『CRM(顧客関係管理)』
『N=1マーケティング』
『カテゴリーエンドポイント(CEPs)』
『コネクテッドTV』
『ショートドラマ』
どれも、生活者理解とブランド成長のヒントが詰まったテーマです。
そして、これらは一見、それぞれ別の概念に見えますが、実は「一人のカスタマーとどうつながるか」という視点で捉えると、一本の線でつながっているように思います。 では具体的に、どのようにつながっているのか見ていきましょう。

トレンドキーワード1. CRM(顧客関係管理)
CRMは “Customer Relationship Management” の略で、「顧客との関係を“設計して運用する”ための戦略」と「データ」、「仕組み」を合わせたものを指します。
簡単に説明すると、顧客一人ひとりの情報を一元管理するシステムのこと。 顧客情報はバラバラに記録されていることが多く、『属性情報』や『取引・購買履歴』、『接点履歴』、解約済みなのかといった『状態』、アンケート回答やコールセンターへの電話内容などの『意見』等を結び付け、一元管理することで時系列での見える化を可能にします。
企業や組織がCRMを導入する目的は主に4つ。
- リピート率向上・LTV(Life Time Value/生涯価値) の最大化
適切なタイミングで適切な顧客へのフォローを可能に - 営業生産性の向上
“属人的な情報”を見える化し、チームで共有 - 顧客満足度・FRS 向上
問い合わせ履歴や不満を踏まえた個別対応・改善 - マーケティング投資の効率化
既存顧客へのアプローチ強化による新規獲得偏重からの脱却
MSSにも今年、多くのお客様からCRMに関連するご相談をいただきました。
簡単な事例をご紹介すると、以下のようなものがあります。
事例1: グローバル企業様からのグローバル顧客データの横断分析アドバイザリー依頼
事例2: 小売業のお客様からのSNS運用を活用したCRM構築のご相談
こうしたCRM運用で注意すべきことは、CRMが「自社経済圏へ顧客を囲い込むための手段」ではないこと。顧客自身が「囲い込まれたい」と思っているのかは疑問なのです。この視点を無視してしまっては、顧客との良好な関係を築くことが難しくなります。
*1:LTV(Life Time Value/生涯価値) :一人のお客様が一生を通じて企業にもたらす利益のこと
*2:FRS : MSSが開発した、ファンを測定する指標。詳しくはFRSⓇ(Fans RelationShip Score) – 株式会社MSS
トレンドキーワード2. N=1マーケティング
従来のマーケティングは、顧客をNとしたとき、「n=1,000」や「n=10,000」といった“集団”を対象とした発想が中心でした。
N=1マーケティングは、これを極限まで細かくして「一人の顧客(N=1)に最適な提案を行う」という考え方です。
例えば、30代~40代・共働き・子育て層といった属性で束ねたセグメンテーションによるマーケティングではなく、Aさん個人の生活タイムラインや購買プロセス、感情の揺れや細かい選択理由などに着目したマーケティングを指します。
重要なのは、「単なるパーソナライズ表示」の変更だけではないという点です。これは、名前だけ挿し替えたメール(「山田様専用セール!」など)を送ることなどがあてはまります。
これを現実にするには、主に3つのことが大切です。
一人ひとりのデータを把握してそれぞれにあった戦略を決定し、オートメーション化してアプローチする。
そのためには、たった一人を分析して『行動の時系列』、「いつ・どこで・誰と」といった『状況』、『頭の中の判断基準』、『感情の揺れ』などを徹底的に分析し、選択・意思決定のメカニズムをあぶり出したうえで、仮説として一般化することが求められるのです。
MSSでも、今年主に高額商品や富裕層向けの「N=1 マーケティング」のご相談が相次ぎました。
マスマーケットに向けて大衆全般にそれなりに受け入れてもらえる商品を開発する流れから、N=1マーケティングという考え方でLTV(Life Time Value/生涯価値)を向上させる顧客ニーズをしっかり満たす商品開発の潮流へと、変わってきていることが窺えます。
N=1マーケティングは顧客動態を把握し、誰にどうなってもらいたいかといった目的を設定して分析することが重要。また、外れ値だと思った人から問題を解決する突破口が見えてくることもあるため、安易に除外しないことも大切です。 ただし、やり過ぎるとターゲット側の「監視されている感」が出て気味悪くなるリスクもあります。N=1マーケティングの肝は、“知りすぎている”ことをひけらかさず、相手の立場に立った自然な提案に落とすことです。
*3:CRM: 前トピック「トレンドキーワード1. CRM(顧客関係管理)」参照
*4:アルゴリズム: 購買履歴や顧客データなどからおすすめや行動確率、優先順位などを算出する技術
*5:自動化基盤: マーケ施策や顧客対応を自動で効率化する仕組み
トレンドキーワード3. カテゴリーエントリーポイント(CEPs)
「カテゴリーエントリーポイント(CEPs)」は、英語で “Category Entry Points” と表記します。
意味を簡単に説明すると、「そのカテゴリーを思い出す“きっかけとなる状況・文脈”」 です。
有料動画サービスカテゴリーなら、例えば:
- 「週末の夜、外に出ずにゆっくり過ごしたいとき」
- 「通勤・移動中に、短い時間で気軽に暇つぶししたいとき」
- 「SNSや友人の話題で見たい作品が出てきて、“今すぐ追いつきたい”と感じたとき」
こうした「場面・気分・時間・人との関係」などがCEPsです。
これらのCEPsが多ければ、潜在的顧客に有料動画サービスを利用してもらう機会が多くなり、有料動画サービスカテゴリーとブランドの結びつきが強いほど、自社ブランドの動画コンテンツを選んでもらう確率が高くなります。
そこから逆算すると、自社商品・サービスを利用してもらうためにすべきことが見えてきます。
- 自社ブランドの属するカテゴリーのCEPsをできるだけ多く・強く押さえること
- その場面で真っ先に思い出してもらえる「記憶上のポジション」を取ること
具体的には、
- 自社カテゴリーでどんなCEPsが存在するかをリストアップする
- 実際の生活者調査で、どのCEPsがどのブランドと結びついているかを測る
- 手薄なCEPsでのコミュニケーション(広告、店頭、コンテンツ)を強化する
MSSでは今年、FMCG(Fast-Moving Consumer Goods) だけでなく、オーディオ機器、高級腕時計といったSMCG(Slow-Moving Consumer Goods)でも、CEPsを自社施策で活用するための定性調査ができないか、といったご相談やCEPsを使った新たな市場開拓の機会を探れないか、といったご相談が相次ぎました。
「20代女性」「子育て層」といった属性セグメントだけを見ていると、“いつ・どんな状況で思い出されたいのか”という視点が抜けがちです。
CEPsは、ターゲット設計を「属性 → 文脈」へと一段深く進めるための概念と言えます。
*6:FMCG(Fast-Moving Consumer Goods) : 日用品など、消費・購入サイクルが早い生活必需品カテゴリー
*7:SMCG(Slow-Moving Consumer Goods): 購入頻度が低く、比較的長期利用される傾向のある商品群

トレンドキーワード4. コネクテッドTV
コネクテッドTV(CTV)は、インターネットに接続されたテレビ(もしくはテレビとして機能するデバイス)の総称です。
具体的には、
- スマートTV(ネット機能内蔵テレビ)
- Fire TV Stickなどのストリーミングデバイスをテレビに接続したもの
- PlayStationなどのゲーム機をテレビに接続したもの
などが含まれます。
近年、このCTVの普及率が大きく増加し、視聴者がテレビデバイスを使ってYouTubeなどの動画配信サービスを見る時代になりました。そのため広告メディアとしても注目されているわけです。
(出典:公正取引委員会(JFTC)「コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査報告書(概要)https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/mar/240306_gaiyou.pdf」)
従来のテレビ広告は、「番組枠 × 地域 × 世帯視聴率」に依存していました。 しかしCTVでは、広告主はデジタル広告と同じように、狙った相手に効果を測りながら大画面の動画広告を流すことができます。
具体的には、
- インプレッション数
- 完全視聴率
- リーチ(何人/何世帯に届いたか)
- フリークエンシー(一人当たり何回見たか)
- クリック or QRコード経由のアクセス(取れる場合)
- サイト訪問・アプリインストール・購入コンバージョン(クロスデバイス計測含む)
などを測りながら広告掲載が可能に。
MSSが長年お付き合いさせていただいている複数のお客様からも、従来のテレビとコネクテッドTVやスマートTVの利用意識実態の違いなどを明らかにするためのリサーチのご相談や、セカンダリーデータ確認などのお問い合わせをいただきました。
コネクテッドTVは、テレビのリーチ力とデジタルの細かな計測・ターゲティングをあわせ持つ有望な広告メディアですが、プラットフォームの分断や指標のバラつきなど、まだ課題も多い領域です。
だからこそ「CTVに何を期待するのか(リーチ補完なのか、若年層強化なのか、CV貢献なのか)」という役割を明確にし、テレビ・オンライン動画と一体で設計していくことが、これからの動画コミュニケーション戦略のカギになります。
*8:インプレッション数: 広告やコンテンツがユーザーに表示された回数を示す指標
*9:クロスデバイス計測: ユーザーが異なるデバイスでサービスを利用している際に、その情報を引き継ぐこと
トレンドキーワード5. ショートドラマ
ショートドラマは、1分〜数分程度の短いエピソードで構成されるドラマ形式のコンテンツを指します。 YouTube・TikTok・Instagram Reelsなどで消費される、“短編連続ドラマ”のイメージです。
動画が非常に短いので、通勤中やちょっとしたスキマ時間でも1本だけサクッと視聴しやすく、そのうえ“続きを観たくなる構成”でシリーズ化されることが多い点が特徴的。コメントやシェアを通じて拡散されやすい点も重要になります。
ポイントは、
- 商品やブランドの世界観を、物語を通して自然に伝えられる
- 単発のCMよりも、キャラクターやストーリーへの感情移入を起こしやすい
- 一話ごとに違う側面(機能・利用シーン・ベネフィット)を描き分けられる
という点。
そのため、ショートドラマに共感できる日常や人間関係、ちょっとしたオチを詰め込み、その中にさりげなくブランドや商品を登場させることで、「つい続きが見たくなる物語」として受け入れてもらい易くなるわけです。
うまくハマると、「広告費で作ったコンテンツが、自走して勝手に見られ・語られる」状態を作り出せる、かなりコスパの高いマーケティング手段になります。
一方で、
- 「商品見せ」を急ぎすぎると、“広告っぽさ”が強くなり、離脱されやすい
- 逆に物語に寄りすぎると、何のブランドだったか覚えてもらえない
- 続編設計や更新頻度など、コンテンツ制作側の負荷が高くなりがち
という課題もあります。
成功しているショートドラマは、「共感できる日常 × 少し誇張したドラマ性 × さりげない商品・ブランドの役割」 このバランスが上手く取れているケースが多いといえるでしょう。
まとめ:5つのキーワードを一本の線で見る

一つひとつのキーワードを俯瞰して見ていくと、これらは無関係なものの集まりではなく、少しずつリンクしているようにも見えてきます。
CRMで一人ひとりの履歴を蓄積し、N=1マーケティングで「今この人にどんな情報を届けるか」を決め、CEPsで「どんな状況で商品が手に取られるのか」を把握。コネクテッドTVという大画面の接点で、ショートドラマとして物語という商品広告を届けます。
どれか一つだけに注目すると「ツール導入」「新しい媒体出稿」で終わりがちですが、5つを併せて捉えると、「事業として顧客とどう向き合うか」の設計図がいっそう見えやすくなります。
この5つのキーワードを掛け合わせて使えば、結果としても各顧客にとって最適なタイミングで、本当に欲しい商品を確実に届けられるようになるのです。
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